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とぎ汁と粗塩に野菜を漬けるだけで乳酸発酵

4つの瓶に入った発酵漬物

今回ご紹介するのは「米のとぎ汁」でつくる、発酵の常備菜。ごはんを炊くたびに出るとぎ汁。
みなさん、普段はどうしていますか?

とぎ汁にはお米由来の栄養分や乳酸菌のもとになる微生物が含まれます。このとぎ汁を使って野菜を漬けるだけで、冷蔵庫の中で自然に発酵が進み、暑い夏にもぴったりな“やさしい酸味の漬物”が完成します。発酵ってなんだか難しそう…という方にも、「これならできそう!」と思ってもらえると思うので最後までご覧くださいね

とぎ汁は捨てないで!その理由とは?

とぎ汁は、お米を洗ったときに流れ出る白濁した水のことです。
一見ただの濁った水に見えますが、実はお米の表面に付いている糠(ぬか)や、でんぷん、たんぱく質などの栄養分が含まれています。

このとぎ汁を活用すれば、添加物や酢を使わなくても、野菜自体が持つ乳酸菌がじんわりと自然に発酵。その働きでまろやかな酸味が生まれ、野菜がやさしく変化していきます。

さらに、火を使わず、冷蔵庫の中で低温発酵が進むとぎ汁漬けは、暑さで食欲が落ちやすい夏にもぴったりな一品なんです。

「とぎ汁ってそんなにすごいの?」と思われるかもしれませんが、まさに、“捨てるなんてもったいない!”と言いたくなる、地味だけどすごい存在なのです。

とぎ汁漬けってどんなもの?浅漬けとの違い

とぎ汁漬けとは、米のとぎ汁と塩、野菜を瓶などの容器に入れて冷蔵庫で発酵させるだけのシンプルな発酵漬物。

発酵の進み具合によって味が変化していくのが大きな特徴です。

では、よく聞く「浅漬け」とはどう違うのでしょうか?

  • 浅漬けは、塩や酢、昆布などの調味料で短時間(数時間〜1日程度)味をなじませるもの。  発酵ではなく「味付け」としての漬物です。
  • 研ぎ汁漬けは、乳酸菌の働きで数日かけてじんわりと発酵させるもの。日が経つごとに酸味や旨みが深まり、味も香りも変化します。

私の実体験では、1〜2日目はまだ浅漬けっぽい風味ですが、3〜4日目になると乳酸のさわやかな酸味と複雑な奥深さが加わってきます。

日に日に味変を感じられる、ここが研ぎ汁漬けの楽しいところ。

とぎ汁で漬けた漬物が小皿に入っている
漬けて3日目のとぎ汁漬け

乳酸菌は嫌気性、麹菌は好気性

おうちで発酵食を手作りするときの説明に、よく次の様に書かれているのを見たり聞いたりすると思います。

  • 発酵する過程では蓋を閉め切らず少し開けて保温…(塩麹など)
  • 空気に触れない様に表面にラップをして保存…(水キムチやとぎ汁漬けなど)

この2つは、それぞれ好む環境が違うんです。乳酸菌は「嫌気性(けんきせい)」=空気を嫌う菌

とぎ汁漬けや水キムチ、糠漬けなどは空気に触れない事で菌が発酵しやすい環境になります。
つまり、瓶に野菜ととぎ汁を入れたら、表面が空気に触れない様にラップで覆うことで、乳酸菌が優勢になり、雑菌やカビの発生も抑えられるということなのです。

麹菌は「好気性(こうきせい)」=空気が大好きな菌

味噌や甘酒、塩麹などに使われる麹菌は、空気に触れることで活発に働きます。そのため、蓋を閉め切らずに空気の出入り口を作っておくことが大切です。

このように、発酵に関わる菌には「空気が必要かどうか」で性質が分かれます。

※どちらの菌も発酵の過程でガス(二酸化炭素)を発生させます。きつく密閉してしまうと内圧が高まり、フタが飛ぶ・中身が漏れるなどのトラブルになることがあります。

完全にフタを閉めず、空気が逃げられるように「軽くフタを乗せる」「ラップをふんわりかける」などの工夫も必要です。

材料と道具|基本のとぎ汁漬けレシピ

材料(小さな保存瓶1本分)

  • 野菜:お好きなものを適量
  • 米のとぎ汁:2回目のとぎ汁200cc(白く濁っているもの)
  • 粗塩(自然塩):6g(とぎ汁の3%)

道具

  • 米を研ぐ大きめのボウル
  • 清潔な保存瓶や容器
  • ラップ(または容器の口にぴったり合う蓋)

ポイント

  • 野菜は洗ったら水気をよく切ってから瓶に入れることで、雑菌の繁殖を防ぎます。
  • 煮沸消毒(またはレンチン消毒)やアルコール消毒で容器や包丁、まな板などの調理器具は常に清潔に
  • 単品漬けを複数の瓶に日数をずらして仕込むと、いろんな野菜の味の変化を長く楽しめます!
  • 使う塩は、**精製塩ではなく「ミネラルを含んだ自然塩(海塩など)」**がおすすめです。
  • 漬ける量が多いと冷蔵庫の場所をとるので、あらかじめ収納しやすい形の容器を選ぶといいです。

漬け方の手順

  1. 野菜を洗ってカット。水分をしっかり切る。
  2. 保存瓶や容器に野菜を入れる。
  3. 粗塩を混ぜ合わせたとぎ汁をひたひたになるまで注ぐ。
  4. 液面をラップで覆い、蓋を乗せ置くか、ゆるくしめる
  5. 冷蔵庫で保存。3〜4日後が食べ頃。(発酵具合は野菜の種類や状況によります)

とぎ汁漬けの魅力は、作り方がとにかくシンプルで手間いらずなこと。一度仕込んでしまえば、あとは冷蔵庫にお任せで、時間がやさしく育ててくれます。

野菜別のアレンジ例|おすすめの漬け野菜たち

研ぎ汁漬けの楽しいところは、どんな野菜でも試せること。野菜によって発酵のスピードや味の変化が異なるので、ぜひいろいろ試してみてください。

野菜の切り方で食感が全く変わって楽しいです。また昆布や長ネギの青い部分などを一緒に漬けると旨みや香りが増します。

おすすめの野菜

  • きゅうり お漬物の定番。味の変化がわかりやすくいろんな料理の付け合わせにgood!
  • キャベツ 、紫キャベツ 発酵による酸味とシャキシャキ感のバランスが◎。
  • 玉ねぎ  辛味が減り甘みが引き立ちます。新玉ねぎは特に美味です。スライスしてそのままサラダに使ったり、辛味が強い時は炒め物に入れるのがおすすめ。
  • なす  まさに美味しい水茄子になります。漬けすぎると変色してくるのでその時は炒め物や汁物に入れています
  • プチトマト  ワンランク上の冷やしトマトが、あと引く美味しさです。夏の常備菜に漬けておくといろんな用途に使えます。

他にもおすすめの野菜:

  • 大根、白菜、セロリ、にんじん、オクラ、パプリカ、カブ など。
  • 香り野菜や葉物は、やや日持ちしにくい傾向があるので注意です。

「これも漬けてみたらおいしいかも?」というワクワク感も、研ぎ汁漬けの魅力のひとつです。

賞味期限と保存方法|いつまで食べられる?

冷蔵庫で保存する場合、基本的には1週間〜10日以内に食べ切る様にしています。ただし、発酵の進み具合や漬けた野菜の種類によっても変わってきます。

保存中に以下のような状態が見られた場合は、食べるのを避けましょう。

  • 泡が大量に出ている
  • 野菜が溶ける・異常なぬめりがある
  • 発酵臭ではなく、異臭がある

実際に私が感じた食べ頃の目安:

  • 1〜2日目:まだ浅漬けのような風味。酸味は少ない。
  • 3〜4日目:乳酸発酵が進み、酸味が出てくる。食べ頃。
  • 5〜7日目:野菜が透き通り、旨みと酸味がバランスよくなる。
  • 8日目以降:発酵がさらに進み、酸味が強めに。加熱調理向き。

農水省の公式サイトも参考に

農林水産省の「和ごはん特集」ページでは、研ぎ汁漬けの目安として

**「2週間以内を目安に」**と紹介されています。漬け汁の2次利用についても触れてありますのでご興味があればご覧ください。

参考リンクはこちら:米のとぎ汁漬けで食材を作り置き 
農林水産省|和ごはん特集「発酵食品の魅力」より

とぎ汁漬けは夏にぴったり!その理由とは?

この発酵漬け、実は夏こそおすすめの保存食なんです!

夏に合う3つの理由

  1. 火を使わずに仕込める  → 暑いキッチンで加熱しないからラクな上、非加熱のビタミンミネラルが摂れる
  2. 酸味がさっぱりして食欲をそそる  → 冷たいままでも食べやすく、体を冷やし夏バテ気味の体にぴったり
  3. 自然な抗菌作用がある  → 発酵によって酸性になるため、保存効果も期待できる(要冷蔵)

まとめ|とぎ汁の再利用で暮らしにやさしい発酵を

何気なく流していた「とぎ汁」が栄養と菌の宝庫だったことに気づくとなぜかやさしい気持ちになります。塩と野菜と瓶があれば、冷蔵庫で静かに発酵が始まり、日々味が変わっていく。その様子を見ていると、「生きているチカラ」を感じるのです。

とぎ汁漬けは、暮らしにやさしさと小さな楽しみをもたらしてくれます。

発酵ってむずかしそう、時間がかかりそう。そんなふうに感じていた方にも、このとぎ汁漬けは手軽で頼もしい味方になってくれるはず。あなたの台所にも、やさしい発酵の彩りが加わりますように。

作り方の全動画はこちら

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