胃癌が発覚し、無事に手術を終えて自宅に帰ってきてからの話です。
(発覚してから手術までの話はコチラ)
初期で見つかったものの悪性度が高い癌だったので予防的措置で胃のほとんどを切除しました。
命が助かった事に心から感謝しつつ、退院後は次の闘いが待っていました。
食事をすると襲ってくる辛いダンピング症状
まず退院後に悩まされたのが食事の度に襲ってくる痛みとダンピング症状です。
食後すぐに襲ってくる早期ダンピング症状

消化器官の胃が無くなると食べたものが一気に小腸に流れ込みます。これにより上記の様な様々な症状が食後30分頃に現れるのです。
私の場合はまず痛みと下痢からでした。良く噛んでゆっくり食べる様にしてはいましたが、一度痛みが始まると30分ほどひどい痛みに悶えていました。痛みが治ってきたかと思う頃に動悸や冷や汗、めまいが起こります。食後1時間ほど経つとやや落ち着くといった感じが多かったです。
食後3時間ほど経ってから襲ってくる後期ダンピング症状

食後3時間ほど経ったころ出てくる症状はひどい時には意識が無くなる感覚になるので、倒れるのではないかと不安でした。
食後に糖分の吸収が急速に行われると高血糖になるんですが、その後に血糖値を下げる為のホルモンであるインスリンが過剰に分泌されます。そうすると今度は低血糖の症状が出るのです。
冷や汗、めまいに手の震えが一気に襲ってくると全くもって動けなくなっていました。
退院してからしばらくは食事を小分けにして少しずつ摂取していたので、ほぼ1日中をダンピング症状との闘いに費やしていた感じです。
噴門が無くなるという事
噴門(ふんもん)とは食道と胃をつなぐ胃の入り口の部分で括約筋によって食べ物の逆流を防いでいます。
噴門がなくなるということは逆流弁が機能しないので食べたものが逆流しやすくなります。横になろうものならそのまま食べ物が戻ってくるのです。慢性の逆流生食道炎となってしまいます。
とにかく逆流の仕方が半端ないのです。少しでも食べ過ぎたり水分が多かったりすると噴水の様に逆流し、鼻から出てくることもありました。その刺激の強さから胆汁液などが混ざってると思われます。
それらが逆流してくると食道や喉、鼻の奥などガソリンで火を付けられた様な痛みが襲ってきます。この痛みは本当に何とも言えない苦痛でした。病院で相談すると粘度の高いドロっとした緑色の薬が処方されました。実際の効果はというと、焼石に水の感じではありましたが、お守りとして常備していました。

逆流性食道炎の治療で処方された『アルロイドG内用液5%』については、くすりのしおり(RAD-AR)公式サイトで薬名を検索してご確認ください。」
この逆流により睡眠には大変苦労しました。術後5年ほどはまっすぐ横になって眠ることが怖くてできなくなりました。
というのも、逆流すると肺炎を起こす様になったのです。誤嚥性肺炎です。
怖い誤嚥性肺炎
逆流性食道炎とは長い付き合いになりますが、その中でも特に心配していたのは誤嚥性肺炎です。
きっかけはいつも寝ている時の咳でした。ほんの小さな咳であってもそれは急に始まります。
逆流物が気管に入ってしまうのです。そうすると魔の時間帯がやってきます。異物を出そうとする怒涛の咳の始まりです。嘔吐するほどの激しい咳がずっと止まりません。私の場合はその後に体の節々が痛み始め熱が出てくるのです。これまで2度ほど病院に行き、1度は入院も勧められましたが家の事情で通院で治療しました。
その後も何度か同じ様な症状になっていますが受診はせずその都度何とかやり過ごしています。
誤嚥性肺炎は特に高齢者の間でも死亡原因になりやすいので今後も引き続き気を付けていかないといけません。
横になった時に逆流してきたり、それによる窒息などが懸念されるので、意識不明の状態で搬送などされる時はその情報が伝わる様に携帯のメディカルIDにはその情報を入力しています。
(気休めですが…)
私がやっていた対処法
一度逆流してしまうと、ただただ猛烈な痛みと不快感が過ぎ去るのを3時間ほど待つしかないので基本的にいかに逆流させないか、が大切だと思っています。そのためには夕飯に特に気をつけないといけません。食べる時間も要注意です。
避けた方が良い食材(※私の体質の個人的な見解です)
- 海藻類
- きのこ類
- 根菜類
- 鯖
- パスタ
上記の食材は朝や昼だとさほど問題ないですが、夕飯に食べると高確率で逆流に拍車がかかっていました。他の麺類は大丈夫なのになぜかパスタだけはNGでした。鯖も同じく他の魚と違い不思議とワースト食材でした。
食べる時間
就寝の5時間前までに夕飯を済ませていました。仕事をしていると中々難しいですが、遅くにしか食べれない時は特に食材に気をつかっていました。
寝る姿勢
枕やクッション、ヨギボーなどで傾斜をつけて、とにかく頭を高くして眠りました。ついにはマットレスが自動で起き上がるタイプの介護用ベッドを購入したものの、この姿勢で安眠ができることはありません。しかし逆流による窒息や肺炎になることを思えば仕方ありませんでした。
逆流してしまったら
どんなに気をつけても睡眠時の寝返りなどで逆流して咳き込んでしまう事は多々ありました。
軽い時もあれば重症になってしまうこともあります。処方された薬が効くとは限りませんでした。前述した様に一度逆流して焼ける様な痛みが襲ってきたら数時間とにかく耐えるしかありません。
その時の私の苦肉の策は、まず牛乳を100ccほど飲んでから(胆汁液が中和されるかもとの期待を込め)氷を口に含みます。アイスノンや保冷剤で喉や食道など外側から押さえて内外共に冷やしまくり、燃える様な痛みがおさまらないかと頑張ります。気休めですが、いくぶん焼ける様な痛みが和らぐ様な気がしないでもありませんでした。
そうやって3時間ほどやり過ごすと、微熱感は残るものの、地獄の不快感からは解放されました。
生活のペースを掴むまで
術後半年はこの様な症状が毎日本当に辛くて、良く泣いていました。心身ともに不安定でもあり、咳き込んで呼吸がままならなくなり、パニックになったりしました。
それまで当たり前にできていた食べる事と寝る事がどれほどありがたいことだったのかと痛み入りました。
自暴自棄になり、食べることが困難ならばとアルコールに逃げて飲みつぶれて眠っていた時期もありました。(アルコール依存から断酒を決意するまで)
しかし少しずつ食事のペースが戻ってきて、逆流の頻度が減ってきた時、心に余裕も生まれてきました。救っていただいた命を、限りある時間を、こんな過ごし方してたら勿体ないと思える様になりました。喧嘩しながらも傍で支えてくれ、背中をさすってくれている家族の為にも、もっとみんなで笑って楽しく余生を生きて行きたいと思える様になりました。
半年ごとに胃カメラ検査やフォローアップをし、術後5年が経ったころ、無事に社会復帰ができるまで元気になりました。10年が過ぎた頃、それまで通っていた大きな病院から近所のかかりつけ医に転院し年に1度の検診のみになりました。
15年が経つ今でも低血糖症と逆流の症状はたまに出ますが、気をつけるとまっすぐ横になって寝ることもできています。更年期症状や婦人科系疾患もあり子宮も摘出しましたが、(月経困難症から子宮摘出に至るまで)食べることと眠ることが辛かった日々から考えると毎日が穏やかで日々の幸せを感じています。
消化吸収が悪い体なので食事と栄養に気をつける日々です。こんな経緯から料理ブログを発信するに至りました。今日も元気だごはんがうまい!をモットーに。
コメント